2017/06/17

「若年性認知症介護話短歌」~第五回

     [櫻久 介護話短歌] (第五回) 

(コメント)
① 支部代表・副代表・若年性認知症責任者及び当日の司会者はそれぞれ実名(苗字
のみ)を表記します。
②〔〕の中にA若しくはBとあるのは、病態の時期の表示とします。
[A]=初期 [B]=中期 [C]=後期。
③今回紹介する「介護話短歌」は、2012年(平成24年)5月開催の「若年性
認知症家族懇談会」 からのものであります。  


〔A〕
〔Kさん・息子さんも参席(妻・62歳・アルツハイマー型認知症初期)を勤務先を
持つ一方で、自宅で世話・息子さんも協力〕(初参加)

◇四年前 妻から会社に電話あり 〝ドロボウが来て 鍵を盗られた!〟と

◇仕事中 私もいささか驚いて 〝警察を呼び 話をしなさい〟と

◇一騒ぎ 警察が来て落着す されども騒ぎの 〈引き金〉は何?

◇帰宅して 妻の話はどことなく 〈チグハグ〉なれども 追求はせず

◇盗まれた 鍵の悪用防ぐため 〈家の戸の鍵〉 一先ず 一新

◇日が過ぎて トイレの見えない所から 盗られた筈の 〈前の鍵〉発見!

◇〝オカシイ〟と 感じたけれども様子みて 何事もなく 過ぎたる一年

◇一年後 妻に異変が現れる 「同じ言葉を、何度も何度も」

◇今しがた 言った言葉を忘れては トッピな話をする 妻が居る

◇妻の役 現役退たる盲導犬 ラブラドール 二頭の世話なり

◇二年前 何時ものように犬散歩 他人(ひと)とぶつかり 転んで気絶す

◇幸いに 息吹き返して傍らの 二頭の犬と 帰宅する妻

◇その当時 妻は眼科に通院す 〝視野欠損あり〟 言われて驚く

◇眼科医の 勧めもあって早速に 〈脳神経外科〉へと 妻を連れ往く

◇CTの 検査も受けたが 〝特別に脳のキズなど 異変はない〟とか

◇「視野欠損」 〝緑内障とは思えない〟 眼科医はいう 原因不明と

◇〈もの忘れ〉 しきりに現出 今の妻 〈息子の結婚〉 影響懸念す

◇去年(こぞ)の夏 何とか説得 連れていく 〈物忘れ外来〉 妻は受診す

◇検査受け 〈MRI〉と〈CT〉を 「海馬」の萎縮が 少々と知る

◇知らされる 〈妻の病名〉改めて アルツハイマー病 初期の段階

◇診断後 初めて〈薬の処方〉あり 「アリセプト」なり 思い複雑

◇本人も 自分で調べて思案顔 〝副作用有る アリセプトはいや〟

◇初期症状? 妻は表情硬くして 〈感情的なる 物言い〉 増え来る

◇離れ住む 私の母との長年の 折り合いギクシャク 病の引き金?

◇病み至る 実家の父をば見舞わんと 通う私に 妻は冷ややか

◇一度出た 〈怒りの感情〉跡引くか 事々に出る 我へのイラ立ち

◇思い立ち 別の専門クリニック 妻は受診す 「リバスタッチ」(*)に
(*)リバスタッチ=平成23年6月発売の認知症薬の一つ、形態は貼り薬

◇貼り薬の リバスタッチを二月から 〝薬効如何〟と 妻を見守る

◇姑と 葛藤長年 妻なれば その鬱積を 今 我に吐くにや

◇長年の 嫁と姑の葛藤が 〈気持のシコリ〉か 妻に残存?

◇耐える今 妻の罵倒と悲憤をば 病気*が原因? 〝仕方がないかな〟
(*)病気=此処では「認知症」のこと。

◇明らかに 病態進むか此の頃は 〈もの盗られ妄想〉 妻に時々

◇一週間 やむなき〈出張〉我にあり 息子に依頼の 母の看護り

◇福島の 妻の実姉が心配し 私の留守中 妻の傍ら

◇出張を 終えて私が帰宅する 姉が戻ると 〝物が盗られた!〟と

◇〝そういえば 大きな荷物を背負ってたわ〟妻の妄想 たちまち作話(さくわ)に

◇この作話(さくわ) 否定の私に激昂す これも〈症状〉 受け入れるしかない

◇以前から 妻は愛着 漢方薬 仕舞い込んでは 行方不明に

◇〝無くなった! 盗られちゃったわ 誰だろう?〟 悲鳴 落胆 妻は混乱

◇妻は言う 〝私の大事なお薬を 貴方は姉に上げたんじゃないの〟

◇〝そんなこと 絶対してない〟 言う私 いきり立つ妻 怒り倍増

◇困惑を ほどいて対処の仕方知る 息子と私の 今の渇望

◇入浴中 〝誰かが覗く〟と悲鳴上げ  妻に「幻覚」 出ることもあり

◇あと数年 勤務の必要 我にあり 妻の日常 対処をどうする

◇ご近所の 人との会話は普通なり 〈他人対応*〉 シッカリの妻
(*)他人対応=『杉山本』ーー認知症について理解するための9大法則・1原則」の
中の第3法則~自己有利の法則(他人と対する時、自分に不利なことは認めずに
巧みに振舞う。)

◇懸念する 「介護保険」の認定は こういう妻なら 〈却下〉となるのか?


[杉山代表]

□大丈夫 「介護保険」は心配ない 申請書類を しっかり書くこと

□一番に 身近な人には キツクなる 「出現強度の第2法則*」
(*)第二法則=『杉山本』ーー認知症について理解するための9大法則・1原則」の
中の第2法則~症状の出現強度の法則(相手が身近な人であればあるほど、症状を
より強く出す)

□自己にとり 不利な事柄認めない 第3法則(*)「自己有利」となん
(*)第3法則=自己有利『杉山本』ーー認知症について理解するための9大法則・
1原則」の中の第3法則~自分にとり不利なことは認めない(他人には自分をよく
見せようとする)

□まさに今 二つの法則 当てはまる 〔KT婦人〕は その渦の中


〔A〕 
〔KTHさんの息子さん(実家の近くに世帯を持ちながら折にふれて両親を支援)〕


◇折を見て 実家に戻ってケアする 割と素直に 落ち着いている母

◇職場から 服薬忘れる母に言う 電話の向こうで 泣き出すことあり

◇思い込み 父への悪口 母に出て 我の気持の 複雑悲しく

◇思わずも 父を弁護の言葉出る 母の反応 極めて病的

◇〝誤解だよ〟 我の〈否定〉の一言に 母は怒りの 言葉噴出

◇気づきあり 〈否定〉はならじと直ぐ後で 〝そうだねそうだね〟母は和らぐ

◇それ以来 母の怒りに頷いて 〝そうだね〟続ける 対応覚える

◇簡単な 料理・買物 出来る母 見た目は到底 病気*と思えず
(*)病気=母の抱えた「認知症」のこと。

◇広がって 母の〈妄想〉広がって 〝こんなになったの おかあさん*のせい〟
(*)おかあさん=此処では息子さんから見て、父の実母(祖母)、つまり母との関係
では姑)のことを指す。

◇病識を 持つか持たぬか ツブヤキは 〝ちっともよくはなりそうもない〟と母

◇もう少し 母の日常落ち着いて 安らかなること 我は渇望


〔櫻久の感想歌〕

▽息子さん 〝否定はよくない〟気づきしは 素晴らしいこと 「介護の基本」に

▽お母さん 今は様々口にする 感情そのまま 「認知症の人」

▽否定せず 割り切り微笑(ほほえ)み受け入れる〈和みの介護〉の大事なステップ

櫻久からの追記~今回の介護話短歌のうち、上の▽印で掲げた三首は、私櫻久が、
ブログへの書き込みに当たって、吟味をさせていただいた際に詠いこんだ拙家である
ことをお断りします。又、今回の介護者〔Kさん〕親子の参加は、24年9月回及び
26年5月会の二回ありましたが、以後の情報は特に承知しておりません。

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2017/06/07

若年性認知症介護話短歌~第四回

   [櫻久 介護話短歌] (第四回)

(コメント)①支部代表・副代表・若年認知症責任者及び当日の司会者はそれぞれ
実名(苗字のみ)を表記します。
②〔〕の中にA若しくはBとあるのは、病態の時期の表示とします。A=初期
B=中期 C=後期。
③今回紹介する「介護話短歌」は、2013年5月開催の「若年性認知症家族
懇談会」からのものであります。 

〔B〕
〔Uさん(夫・64歳・脳血管性認知症)を自宅で世話〕

◇わが夫(つま)は 「脳血管性認知症」 8年前から「つどい」に参加

◇初診時に 「認知症」とか告げられて 〝治りませんか〟と尋ねてしまう

◇懸命な 我の質問 受けて言う 〝治りませんね〟と 医師は静かに

◇「不治」と知り 思いなおして発奮す 夫を伴い 諸所のイベントへ

◇ケイレンやパーキンソンの症状*が 「脳血管性」ゆえ 徐々に出て来る
(*)パーキンソン症状=「パーキンソン病」の症状に似た〈にぶい体の動き〉や
〈小刻み歩行〉などの症状。

◇最近は 自力歩行が難しく 何処へ行くのも 「車椅子」の夫(つま)

◇出来ること 日替わり模様で出入りする 「まだら世界」と 後で知るなり

◇分かること 分からないこと入れ替わる 「マダラ世界」が 夫の日常

◇「杉山本」〈第4法則*〉そのままに 自由自在の 夫(つま)の毎日
(*)杉山本/第4法則=杉山孝博著『認知症の理解と介護』・(理解のための9大法則
・1原則/第4法則)しっかりした状態と「認知症」の症状が、一人の中に
混在する。

◇「ショート」には 〈4泊5日〉を月二回 夫を預ける プログラムする

◇「ショート」では 夫はほとんど眠らない「連絡ノート」にそういう記録が

◇夜 家出 夫はベッドに腰掛けて 自力で仰臥が 出来ないでいる

◇傍に寄り 手助けしながら横にする 夫の眠りは 此処から始まる

◇この眠り 長くも深くも続くなり 夜昼通して 〈24時間〉

◇人間は かくも続けて眠れるか 何かを必死で 取り戻す夫(つま)

◇翌々日 目覚めて極めて機嫌よく 普段の夫に 戻る不思議さ

◇食事時 自然と口が開(ひら)けない 一口食べるに とても時間が

◇時として 私がムリヤリ食べさせる 〈食欲〉あるのが救いになってる

◇困惑の 今一番の問題は 自力で「食事を続けるノウハウ」

◇自分でも 〈自力摂食の〉気持あり 食事の時間は 一時間半

◇外出時 街での食事はやむをえず 私が介助し なるべく急いで

◇かねてより 「特養入所」も考える けれども なかなか決断出来ずに

◇最近は 地元の「サロン*」に夫(つま)共に 参加し仲間と オシャベリ楽しむ
(*)「サロン」=〔Uさん〕が中心になって、地元で定期的に開いている
「認知症の人と家族」が集まるサロン。

◇近々に サロンの仲間と温泉へ 日帰りなれども 心待ちする

◇夫(つま)共に サロンの和楽で癒される 「自宅介護の支え」になってる

◇自然体 私が在ることそれこそが 夫の日常 和楽の力に


[杉山代表]

□〔Uさん〕も 食事は大切 工夫して〈小さなオニギリ〉試してみるのが


〔B〕
〔Uさん(夫・脳血管性認知症)が口が開けられなくなっていることを心配〕


◇〈オニギリ〉は 確かにいいかも知れません 〝早速 夫に試してみましょう〟

[杉山代表]

□〈オニギリ〉を 食べようとする時 不思議にも〝自然に口が開く〟とされてる


〔B〕
〔Uさん(夫・64歳・脳血管性認知症)を自宅で世話〕


◇パン好きの 夫は朝食パンばかり 〝明日はパンにしてくれよ〟と言う

◇夕食時 我等夫婦は〈ビール〉飲む 主食はなるべく ご飯にしてます

◇わが夫(つま)も 既に「童子(わらし)に還ってる」 突然 私に「仕事」を呉れ
ます

◇外出の 支度終わって〝出掛けましょう〟 間髪入れずに〝〈大〉の方だよ〟

◇折角の 支度を外して〈衣更え〉 〝ホントに 頭に来ちゃうんだから!〟

◇取替えを やってる私の傍(そば)に立ち 私の頭を撫でてる夫が!

◇無邪気なの? それとも内心分かってる? とにもかくにも 〈童〉そのまま

※25年5月懇談会での[杉山代表]への質問の中から

〔質問者氏名?〕~夫(若年性認知症)の症状/記憶の逆行とどう向き合えばよいか

◇わが夫(つま)は 〈離婚体験〉一度あり 〈私と前妻〉 ダブッテ認識
ーー夫は、私と結婚する前に、一度〈離婚〉をしていて、「認知症」を病んでいる
今では、前妻と私とがダブッテいるみたいなんです。

◇いろいろと 言葉を尽くして説明し 解こうとしたとて 空回りする
ーー私も、言葉を尽くして、いろいろと説明をするのですが、夫は、これまで自分が
辿ってきた道筋が呑みこめないらしくて、何としても、スッキリしないんです。

◇話(はなし)して 何度も話して〈慰め〉て 努める私に 夫は〈困惑〉
ーー何度も何度も、これ迄のことを繰り返して話をしても、夫は、唯、困惑する
だけなのです。

◇伺いたい 「離婚の経緯」や「和解」など 今の夫に 説明すべきか
ーー伺いたいことは、夫と前の奥さんが〈離婚〉に至った経緯や、成立した「和解」
の内容などを、夫に説明したほうがいいのでしょうか。

◇このままで この先一緒に暮らすこと 〈誤魔化し〉みたいで 不快なりせば
ーー私としては、このまま、あいまいにしておいて、この先、一緒に生活をしていく
ことが、何となく〈誤魔化している〉ようで、不愉快なんです。


[杉山代表]

□そのような 夫君の状態 何故起きる 様子の〈中味〉を お話しましょう
ーーお話のような、ご主人の「妻の混同の思い」が、なぜ沸いてくるのか、その
理由(わけ)をお話しましょう。

□「記憶」とは 昔にだんだん遡り 〈失われていく傾向〉があり
ーー「記憶」とは、中枢の働きの一つですが、昔に徐々に遡っていくのです。
「認知症の人」は、これがハッキリと現れます。私達も、日常でよく言う言葉は、
〝昔のことはよく覚えている〟です。

□このような 「記憶の逆行性喪失*」は 「認知症」での 主(おも)なる症状
(*)記憶の逆行性喪失=現在から過去に遡って忘れていく。(『杉山本』・
「認知症」を理解するための9大法則・1原則の第1法則「記憶障害に関する法則」
の特徴の一つ)
ーーこれを、「記憶の逆行性喪失」と言っていますが、「認知症」の主な症状なの
です。

□遡及する 場面で次々現れる 前妻・旧宅・青年時代が
ーーご主人の記憶が遡っていくにつれて、前の奥さんのことや、昔住んだ家の
ことや、青年期の頃のことを思い出して、その世界に入っていくのです。

□しかれども かくなる「逆行」固定せず 短い時間で 次々変化す
ーーけれども、この逆行で生じた「記憶像」は、そのまま定着するということは
決してありません。短い時間で、次々と遡りながら動いていきます。

□対応の 原則 基本あり 場面を推察 話を合わせる
ーーこういう「記憶の逆行」が出た時の、奥さんの対応の仕方には「基本」があるん
です。それは「その場面を推察して、ご主人と話を合わせていく」ということです。

□その対応 出来うるかぎりで 和やかに 否定や説明 無用のことなり
ーーこの時の対応の仕方は、出来るだけ「和やかにする」ことが大切です。
〝そんなことはない(否定〟)とか〝本当はこれこれだった (説明) 〟というふうに
言ってはいけないのです。

□否定とか説明 「感情」刺激して 困惑・不安を もたらすキッカケ
ーー否定したり、説明したりするのは、逆にご主人を考え込ませたり、不安にさせ
たり、困惑させたりしてしまうからなんです。

□さり気なく 夫君の話を受け入れて 合わせていきつつ サラリと切り替え
ーー奥さんの対応の仕方は、「さりげなく」ご主人の話すことを「受け入れて」、
〝そうね〟とか〝そうだったの〟と言いながら、自然に〈別の話題〉に移していく
ようにするのです。

□〝今度また 機会があったらそちらまで ご一緒しましょう〟とさりげなく言う
ーー調子を合わせるには、例えば、〝今度、機会があったら、貴方の昔の家のある
ところへ行ってみましょうね〟というふうに、さりげなくいうといいでしょう。

□「正確」を 期そうとするのは禁物で 〈教える・説得・否定〉を避ける
ーー敢えて、ご主人の「記憶の正確さ」を求める必要はないのです。教えるとか
説き伏せるとかは無用ですし、ましてや〈否定〉などは決してしてはなりません。

□食べ物や お茶のことなどさりげなく 話題切り替え 和顔のムードで
ーーこの「記憶逆行」の思いから、ご主人を解放する為の良いやり方としては、
話題を変えることですが、この話題としては、食べ物とか、お茶菓子とか、飲み物
などが無難です。合わせて〈和やかなムード〉に徹することです。

□和みつつ 優しい和顔の対応で 〈夫君の不安〉は 必ず払拭
ーー優しく、和やかにユックリと話をしていけば、ご主人の〈不安〉は、必ず取り
払うことが出来ることを確信してください。

[杉山代表]ーー「記憶逆行」に関わる一女性の話(症例紹介)

□結婚と 離婚を再三した女性 〈苗字〉複数 記憶の〈倉庫〉に
ーー結婚と離婚を何度か体験した一人の女性がいます。彼女の「記憶の蔵」には、〈
複数の苗字〉が詰まっています。

□この人の 病態進行 当然に 〈記憶の逆行〉 様子は明らか
ーーこの「認知症」の女性の病態が進むにつれて、この再三の〈結婚と離婚〉の、
いろいろな記憶が、複雑に絡み合って、蘇ってくることは当然です。

□遡及した 記憶の世界でにこやかに 語る女性は 旧姓の人
ーーこの女性が、にこやかに昔の話をする時は、「旧姓の頃」に還っていることは
明らかなんです。

□逆行で 達した世界に居る時は 〈正確記憶〉を トツトツ喋(しゃべ)る
ーー逆行することで戻った世界にいる時の、この女性の話すことは、「物忘れ」とは
無縁な正確性をしっかりと保っているのです。いささか、奇妙に思えますが……。

□このことは 別段不思議なことでない 彼女にとっては 「日常世界」ぞ
ーーでも、別に不思議なことではないのです。なぜなら、彼女の居る世界は、
「認知症の人の世界」ではなくて、「ごく当たり前の世界」だからです。

□このように 〈割り切り・受け入れ〉培って「気持を楽に対すること」のよき
ーーここ迄お話すれば、お分かりと思いますが、ご本人が、「記憶逆行の世界」に
入った時は、こちらは、「割り切り」と「受け入れ」に徹して、〈和やかな対応〉に
徹することです。このことを、培っていくことが「介護の秘訣」なんです。


〔質問者氏名?〕~夫(若年性認知症)の症状/記憶の逆行とどう向き合えばよいか

◇今はまだ 夫の話に〈嫌悪〉して 落ち込み居るのが 我の日常
ーー今はまだまだ、主人の〈昔の話〉を聞かされるのがイヤで、ガマンしながら聞く
うちに、だんだん落ち込んでしまうだけなんです。

[杉山代表]

□気を楽に 優しく応じてあげるなら 夫君も〈安心〉 戻ってくれます
ーーご主人の話に、引き込まれるかも知れませんが、もっと、気持を楽にして、
優しく応じてあげれば、ご主人も〈安心〉をして、〈こちらの世界〉に戻って
きてくれる筈です。

〔質問者氏名?〕~夫(若年性認知症)の症状/記憶の逆行とどう向き合えばよいか

◇哀しかり 夫はトツトツ語りだす 私を〈以前の奥さんにして〉
ーー主人は、一旦、離婚前に戻ると、私のことを〈前の奥さん〉だと思いこんで、
何か、昔のことを、とめどなく話し出すんです。聞いていて、もう〝哀しくて〟
仕方がないんです。

[杉山代表]

□そのような 場面があるのも〈病態〉で 「認知症」故 ありうることなり
ーーそのような、奥さんには辛い時間があるかも知れませんが、これもご主人が
「認知症の人」であるからこその、病気の状態の一面なんです。
そのことを、「割り切って」いくことです。

□困るのは そういう場面が増えること 〈和楽の対応〉 必須となる筈
ーー病態が進行している一時期、そういう場面が増えると思われますが、大切なのは
、「和楽の雰囲気」を、出来るだけ保つことなんです。これが「認知症の人」と
対する時の、大切な〈コツ〉になります。

□割り切って 〈和楽の対応〉続ければ 夫君の様子も 変わっていく筈
ーー今、言いましたように、「割り切り」に徹して、〈和楽の対応〉を保っていく
ならば、ご主人も、「記憶の逆行」の虜から解放されていくことは確かです。

□そうすれば 夫君の貴女を見る目つき 〝どこかの優しい人〟になる日が
ーーそのように〈和楽のムード〉を保つようにしていくならば、必ずや、ご主人の〈
目つき〉も、変わってくる筈です。〝自分の妻だ〟と思ってくれなくても、
〝何処かの優しい人だ〟とは思ってくれることは確かです。

□自分には 「何処かの優しい人が居る」 夫君の思いが そうなるのがカギ
ーー「妻の認識」を取り戻す迄にはいかないかもしれませんが、ご主人が、〝自分に
は、優しくしてくれる人がいるんだ〟と思ってくれることがカギになります。

□夫君との 日常〝何時かはそうなる〟と 覚悟をするなら かえって気楽に
ーーご主人が、「伴侶の認識」を失くしてしまうかもしれないにしても、「自分の傍
には優しい女性がいる」ことを認識するようになれることが大切で、何時かは、その
ようになることを受け入れていけば、気持も楽になるんです。

〔質問者氏名?〕~夫(若年性認知症)の症状/記憶の逆行とどう向き合えばよいか

◇先生の 仰る「対応」 解ります 難しいけれども 努力惜しまず
ーー先生の仰ることは、難しそうですが、よく解ります。私も、そういうふうに
なれるように、惜しまずに努力してみることにいたします。有難うございました。

(櫻久からの付記) 最初の〔Uさん〕の現在のご様子については、特別の情報は
ありませんが、依然、ご自宅での日常を、「介護保険サービス」を活用しながら
続けておられるものと拝察します。又、後半の「質問事例」につきましては、テーマ
が微妙であるため、敢えて、杉山代表及び質問者のお話を詠み込んだ短歌について、
〈言葉書き〉を加えました。文責は全て櫻久にあります。


2017/05/27

「若年性認知症介護話短歌」~第三回

                 [櫻久 介護話短歌](第三回)

(コメント)①支部代表・副代表・若年認知症責任者及び当日の司会者はそれぞれ
実名(苗字のみ)を表記します。
②〔〕の中にA若しくはBとあるのは、病態の時期の表示とします。A=初期 
B=中期 C=後期。
③今回紹介する「介護話短歌」は、2013年5月開催の「若年性認知症家族
懇談会」からのものであります。 
    

〔A〕
〔Sさん(夫・64歳・アルツハイマー型認知症)を自宅で世話〕(初参加)

◇わが夫 二年前から異変あり 覚えていたこと 忘れてしまう

◇心配し 夫の主治医に尋ねても 〝普通の老化〟と 言われてしまって

◇自宅前 歴史の長い病院で 夫(つま)を説得 受診に導く

◇その時も 診察医師の一言は 〝定年近いと 皆さん同じに〟と

◇この病院 外来受け持つ先生が 時折り交代 〈新たな先生〉

◇次の時 担当替わって新人の 医師の診察 かなりの丁寧

◇突然に 診察終わって告げられる 〝貴方の病気は「認知症」です〟と

◇帰宅した 夫はその日の〈診察〉の 様子を詳しく 私に報告

◇カバンから 取り出す薬の処方箋 覗いてビックリ〈アリセプト〉とあり

◇かねてより 聞いて知ってたこの薬 認知症薬 初めて手にする

◇病院へ 急いで駆け込み医師に会う 改めて聞く 夫の「病名」

◇医師に訊く〝検査をしなくていいですか〟医師の答えは〝その必要なしです〟

◇それからは 何かスッキリしないまま 夫はそのまま 「アリセプト」飲む

◇その病院 外来医師は交代性 時折り替わって 当惑ばかりが

◇三回目 新任医師から告げられる 〝キチンと検査を受けてください〟と

◇改めて 夫(つま)を伴い受診する 「TK大学」の付属病院

◇CTや MRIなど いろいろと 検査を済ませて 医師の「診断」

◇専門医 夫を凝視しハッキリと〝貴方の病名 アルツハイマー型認知症〟と


〔A〕
〔Sさん(夫・64歳・アルツハイマー型認知症)を自宅で世話〕(初参加)
(お話の続き)

◇皆さんの お話伺い納得す 夫の様子の 「似たり寄ったり」と

◇〈空間〉や〈覚えること〉などあいまいに 夫はテレビも 楽しめなくなる

◇日常の 生活動作に障りなし 時に私は イラツクけれども

◇今は未だ 日常生活不自由せぬ 「介護保険」は 未申請なり

◇〝受けなさい〟言われているけど〝まぁいいか〟私の考え〝違っているかも〟

◇この会に 夫を残して初参加 〝二人で来るにはどうすれば〟と悩む

◇「会」を知り 参加を何度も誘っても 頑固に〝イヤダ〟と言い続ける夫(つま)

◇歩くこと 一日一万 ノルマとし 夫は励行 日課にしてます

◇今はまだ 独りで出かけて〈巡歩〉して 迷子にならずに 帰ってくる夫(つま)

◇このところ 夫に出てきた不具合は 電車の乗り降り 独りでは〈ムリ〉

◇何となく〈距離〉や〈高低〉掴めずに 足の踏み出し〈不安〉になるらし

◇乗る時と 降りる時には手を出して 私の腕など 掴む夫に

◇パソコンも 好きな囲碁まで避けている 夫の中では〝何かが変わった?〟

◇日常の 出来ていたこと少しずつ 不具合になるのを 見るのはつらいが

◇夫(つま)は今 〈64歳〉まだ若い 何を考え 何を悩むか

◇でも今は 夫は穏やか〈買物〉も 今迄どおりに キチンとこなせる


[小林司会]

◆出来るだけ 早い機会に取っておく 「介護保険」は 必ず役立つ

◆万が一 貴方にトラブル遭った時 「ショートステイ」が 夫君の避難所

◆我々も 先輩・仲間の助言受け 「介護保険」の 有用さ知る


 〔A〕
〔Sさん(夫・64歳・アルツハイマー型認知症)を自宅で世話〕(初参加)

◇よく分かる 「介護保険」の大事さが お話伺い 早速「手続き」


[杉山代表]ーー「つどい」への参加をイヤがる「認知症の人」には(助言)

□「認知症」 発症間もない初期の人 〈つどい〉へ参加を嫌がることあり

□「つどい」への 参加を嫌がるご本人 連れ出す手立ては いろいろとあり

□さりげない 誘いの仕方は「願う」こと 〝私と一緒に行ってください〟と

□同伴の 願いの理由を一つだけ 〝私が仲間に会いたいからです〟と

□「催し」の 中味は詳しく言わないで〝お願い〟すること それだけにする
ーー「催し」の中味を、詳しく話をする必要はありません。唯、〝お願いする〟
だけでいいのです。それも、〝さり気なく〟です。

□一度でも 参加をしたなら分かるはず 〈仲間〉がいるので 緊張無用と

□それからは 進んで参加をする人も 「仲間に会える」 喜び楽しみ

□本人の プライド刺激をシナリオし〈ドラマ仕立て〉で〝お願いする〟こと


[杉山代表]ーー〈初診〉にこぎつける為のシナリオ一本 

□「初診断」この場に行くのも同様で 〈シナリオ〉作って 演技すること

□スムーズな 〈シナリオ〉一本紹介す 「健康診断 付添い依頼」の

□前もって 病院・医師とも相談し 「診察の場」 作っておくこと

□筋書きは 「健康診断」想定し 〝一緒の受診〟を 持ちかけること

□あくまでも〝お願い〟すること一本で 〈敬意を表するシナリオ〉が良い


[杉山代表] (お話の続き)

□察するに 「つどい」の空気が若しかして 夫君*の怒りを呼ぶこと懸念か
(*)夫君=此処では〔Sさん〕の夫君のこと。

□実際は それほど懸念に及ばない 夫君は必ず 上手に対応

□初対面 見知らぬ人との応対を 認知症の人 見事にこなせり*
(*)「認知症の人」の対応力とは?=杉山孝博著『認知症 理解と介護』の中の
「9大法則・3原則」の第3法則/「自己有利の法則」を参照

□正確な 細かい説明〈不要〉なり かえって夫君の 感情刺激す

□催しの 中味はぼんやりさせたまま 願って頼んで 一緒に参加を


〔A〕
〔Sさん(認知症初期の夫と「つどい」に一緒に参加したいが……)〕

◇先生の 今のお話分かります 次回は必ず 〈二人〉で参加を



〔A〕
〔Rさん(夫・60歳?・脳下垂体線種切除後)を自宅で世話〕

◇わが夫(つま)の 日常異変に気づきしは 五年ほど前 〈電話応対〉

◇実姉との 電話を終えたる夫(つま)に問う〝お元気でしたか?お姉さんは〟と

◇この問いに すらりと答える夫(つま)が居た〝最近 姉とは話していないよ〟と

◇直前の 姉との会話を忘れてる 〝なんだかオカシイ〟 ショック覚える

◇決心し とにかく一緒に病院へ 夫は受検す 「脳のCT」

◇病名を 尋ねる私に医師は言う 〝「脳下垂体線腫*」です〟と
(*)脳下垂体線腫=大脳の下にある「脳下垂体」に出来る「線腫」

◇〈顔丸く 手足も太い*〉夫(つま)となる 病名言われて 気付かされた我
(*)丸顔・手足の肥大=体内の各種ホルモンを司る脳下垂体の線腫により起こる
病変の一つ。

◇直ぐ「手術」 と言われて夫は入院す 無事に終わって 回復得るなり


〔A〕
〔Rさん(夫・60歳?・脳下垂体線種切除後)を自宅で世話〕(お話の続き)

◇一年後 「高校野球」を観戦す 好きな夫(つま)の 夏の楽しみ

◇帰宅した 夫(つま)に尋ねる何気なく 〝今日の試合はいかがでしたか?〟

◇驚いた 〈試合の模様〉を忘れてる 夫(つま)に始まる 「丸ごと忘却」が

◇これまでは 試合の様子をこまごまと 話して楽しく 反芻した夫(つま)

◇早速に 夫(つま)と一緒に病院へ 今度の病名 「健忘症」とぞ

◇それ以来 「アリセプト5ミリ」を服用す 〈記憶を損ねる病気〉と納得

◇症状が 広がって来たのか去年から 〈道に迷って〉 警察の世話

◇「アリセプト」 去年の暮れから〈10ミリ〉に 更に飲み出す「メマリー
15ミリ」も

◇去年(こぞ)の暮れ 「幻覚」夫は訴える 「メマリー」服用 副作用にや

◇「幻覚」を 夫の主治医に訴えて 収める薬の 処方を戴く

◇「幻覚を抑える薬」の服用で 夫は落ち着き 眠りも十分

◇先ほどの 〔Dさん*〕とも同様で 「車大好き」 ウチの夫も
(*)〔Dさん〕=ブログ第一回で取り上げた「アルツハイマー型認知症」の人

◇交差点 〈赤信号をば通過する〉 助手席の我 〝これはアブナイ〟

◇幸いに 車もバイクも人もなく 〈事故〉にはならずに 「気付き」戴く

◇早速に 夫(つま)とよくよく〈話〉して 「免許証」をば 返納しました

◇5年前 夫(つま)は「定年」迎えたが 会社に言われて 勤務継続

◇職場から 自宅の私に電話あり 〝私の居る場所何処なんだろう〟

◇帰宅時の 遅れる毎日続いたり 通勤経路を 〈行ったり来たり〉す

◇症状の かなりの進行知らされる 夫の〈退職〉 一月(ひとつき)前なり

◇会社とも 合意の上での円満な 〈退職〉が出来 私も安堵す

◇「退職」し 夫も気持が安楽に 私も〈安否〉の  懸念が激減

◇この4月 「人間ドック」を受けた夫(つま)〈腸の疑念〉で 一泊入院

◇その夜に 夫は突然大混乱 病院スタッフ 迷惑かけたり

◇〝此処はどこ?〟 夫は不安に駆られたか 荷物を纏めて 病院逃げ出す

◇五年前 「脳下垂体線種」手術後は ホルモン剤をば 服用の夫(つま)

◇三年後 ホルモン剤のみ中止する 〝「脳下垂体線種」完治〟と言われて

◇今はもう メマリー飲むのも止めていて アリセプトだけ〈10ミリ〉を飲む

◇申請し 「介護保険」を受ける夫(つま) 今の介護度 〈要介護1〉

◇窓口で この「会」のこと教えられ 夫を誘って 夫婦で来ました

◇今はまだ 夫の〈日常動作〉など 自立を保って 思い通りに

◇ただ既に 「認識障害」気配あり 備えた〈灯油を庭に撒く〉夫(つま)

(櫻久からの付記) 今回、最初に取り上げた〔Sさん〕(初参加)は、三年間程参加
なさらなかったですが、先の5月7日に開かれた「家族懇談会」へ久しぶりに参加
なさり、夫君のその後の病態の経緯、現在のご様子などをお話しくださいました。
又、二人目の〔Rさん〕につきましては、平成26年以降参加は途切れており、夫君
のご様子は分かっておりません。
2017/05/17

若年性認知症介護話短歌~第二回

                [櫻久 介護話短歌](第二回)

(コメント)①支部代表・副代表・若年認知症責任者及び当日の司会者はそれぞれ
実名(苗字のみ)を表記します。
②〔〕の中にA若しくはBとあるのは、病態の時期の表示とします。A=初期 
B=中期 C=後期。
③今回紹介する「介護話短歌」は、2013年5月開催の「若年性認知症家族
懇談会」からのものであります。 


〔B〕
〔Hさん(妻・60歳・アルツハイマー型認知症・入院中)を通院して世話〕  

◇60歳 妻の診断8年前 〈52歳時〉「アルツハイマー型認知症」

◇診断時 8年前から続け来る 「うつ病治療」も 快癒得られず

◇疑念持つ 妻の年齢〈四十八〉 既に徴候 「認識障害」

◇感知する 微かながらも異変あり 〝「認知症」では?〟 妻の日常

◇診断後 語りつくせぬ波乱あり 妻と私の 「葛藤の日々」

◇初期の頃 十人十色の差はあれど 「中核症状*」 やがて顕著に
*中核症状=記憶・見当識・判断などに障りの出る「認知症」の基本の症状。

◇4年前 「家族の会」へと入会し 先輩・仲間に 様々教わる

◇〈中核〉と〈周辺*〉〈症状〉あるという 病態様々 〈十人十色〉と 
(*)周辺症状=「認知症」の病態進行により現出する症状。2014年からは
「心理・行動症状」と呼ぶようになっている。

◇混乱期 妻と私の葛藤は 〈非難・言い訳・イガミ合い〉の坩堝(つぼ)

◇話聴き 助言も戴き教えらる 「認知症」という 「病」の深さを

◇納得で 前が開(ひら)けたわが思い 妻への対応 基本は「笑顔」と

◇入院後 二年半経つわが妻の 先の生活(つたき)に 思い悩めり

◇「特養」に 〈入所申請〉済ませるも 「入所を許可」との 知らせ来たらず

◇期待する 「特養」一ヶ所あるものの 妻の順位は 「130番」なり

◇〝順番が 10位ですから面談を〟 電話が入った 別の「特養」

◇見学を させてもらった「特養」の 入所者殆ど 〈超高齢者〉なり

◇入所者の 殆どの方 車椅子 〈寝たきり生活〉 驚くばかりに

◇わが妻は 未だ〈60歳〉にて元気なり 院内廊下を 巡回の日々

◇〈会話好き〉 機嫌のよい時ニコニコと 一度切れると 大声の妻

◇「木曜会*」 楽しみ帰院のその夜に 妻は発熱 〈38度〉に
(*)木曜会=神奈川県支部が、毎月第一木曜日に実施している本人・家族・世話人
・サポーター合同の行楽や見学を主軸にした「外歩きのつどい」

◇病院の 適切対応 有難し 妻の発熱 無事に収まる

◇入院を 続ける理由はここにあり 突如の発病 凌げる環境 


〔B〕 
〔Hさん(妻・60歳・入院中の今後をどうするかについて熟慮中〕(お話の続き)

◇〝順番が 遠くなるのはなぜなのか〟 「特養」窓口に 問いただしてみる

◇スタッフは 幾つか質問我にして 〝それではこちらも話し合います〟

◇スタッフの 最初の質問 何気なく 〝奥さん「徘徊」 如何でしょうか〟

◇率直に 私も答える有りのまま 〝毎日廊下を 歩いています〟と

◇この答え いささか驚くスタッフは 思わず笑って 何も語らず

◇二番目は 〝独りで〈食事〉が出来ますか?〟 私は答える〝〈要介助〉です〟と

◇三つ目の 質問 即ち〈入浴〉で 「全部介助」と 答えた私が

◇「ADL*」 ほとんど〈失行〉今の妻 「特養」スタッフ 溜息つくのみ
(*)ADL=「日常の生活動作」の英語略称(activities of daily living)

◇生活の 自立を失い〈全介助〉 そんな人こそ 「特養」対象

◇わが妻も 「食事の介助」は必須なり 見舞う私は 「伴侶ヘルパー」

◇スタッフ*も 「食事は大事」と心得て 動き回って 懸命介助す
*スタッフ=Hさんの妻(ご本人)が入院している病院の介護担当者。

◇「特養」に とっての一番〈困り事〉 やっぱり「徘徊」〈順位〉下げるや

◇「徘徊」は あくまで〈街中巡る〉こと 〈廊下を歩く〉の 「運動」なるべし

◇「特養」の スタッフ人数 定着で 〈常時の不足〉が 一つの原因?

(櫻久からの付記) Hさんの妻・ご本人が、入院するに至ったのは、〈徘徊症状〉が
出ていた時期に、鉄道の踏み切りの柵をくぐって線路内に入ってしまい、「生命の
危険」にさらされたことが、キッカケの一つになったとのことです。


〔A〕
〔Yさん (夫・57歳・前頭側頭型認知症)を自宅で世話〕 

◇わが夫(つま)は 三年程前受診する 告知の病名 「前頭側頭型*」と
(*)前頭側頭型認知症=「前頭側頭葉変性症」の一タイプ。病態の主な症状は、
「物事への強い拘り」、「情動的行動」、人により「反社会的行為」が出る時期も。

◇飲んでいた 「アリセプト」止め「レミニール」 ひと月前から 夫は服用

◇薬効か 〈怒声〉の出ていた夫(つま)なれど 薬を換えたら 穏やかになる

◇副作用? 「幻視」の症状 夫(つま)に出て 自分も私も 共に困惑

◇この〈幻視〉 「家の中には誰か居る」 見知らぬ数人 見えるらしくて

◇入浴後 夫は呟き投げかける 〝次に入るの誰なんだろう〟と

◇居間に居る 私に向かって 夫(つま)の言う 〝風呂に居るのは誰なんだろう〟


◇この〈幻視〉 子育て時代に戻るのか 子等と一緒の 昔へ逆行?

◇家に居て 孤独や不安の感情に この頃 夫は襲われるらし 

◇〝直ぐ傍(そば)に 私が居るから安心よ〟 言っても夫は 不安ぬぐえず

◇外出し 車の助手席 夫(つま)の云う 〝ウチに帰ると一人になるのか〟と

◇運転し 一緒に帰るの誰なのか〟 「認識障害」 夫(つま)の哀しき

◇末っ子で 上の兄とは歳離れ 育ち盛(ざか)りを 孤独に過ごすか

◇味わった 子供時代の「孤独感」 根っこの感情 夫(つま)に根づくか

◇夫(つま)のする 昔話に何時も出る 子供時代の 「孤独感」なり

◇副作用? それとも記憶の逆行か 分からぬままでの 「夫の不安」よ

◇暴言も 怒りもないのが有難い 穏やかなる夫(つま) 見守る私が


[杉山代表]ーー記憶の残存と逆行について(解説)   

□ともすれば 「記憶の逆行」影響す その頃感じた 「孤独感」へと

□恐怖感 キッカケとなり怒り出す 症状示すが 長くは続かず

□「記憶」とは 感じた情動残すこと その働きこそ 「記憶力」なり

□食べ物の 美味しいところを記憶する その後の食欲に メリットとなる

□怖いこと 体験した時 記憶する その後の恐怖を 避ける手立てに

□二年前 「3月11日*」〈何してた〉 たいていの人 ハッキリ記憶す
(*)2011年3月11日=東日本大震災の発生した日
ーー今から2年前の2011年3月11日は、殆んどの人が記憶しているであろう「
東日本大震災」が発生した日です。この時、感じた「情動(感情)」は、その時に、〝
自分が何をしていたか、何を感じたか〟を、キチンと覚えさせているのです。

□味わった 「恐怖感」こそ「情動」で その日の行動 記憶を刻印

□幼児期の 寂しい気持や悦(よろこ)びは 「情動」として ハッキリ記憶す

□〔Yさん*〕の 基本の情動不安感 記憶に残って 逆行で出る
(*)Yさん=ここでは「ご本人の夫君」を指す。

□瞬間に 昔に還って恐怖する これこそまさしく 「記憶の逆行」


〔A〕
〔Yさん (夫・57歳・前頭側頭型認知症)を自宅で世話〕

◇その場合 私は夫にどういえば 〝大丈夫だよ〟とか 言うのでしょうか


 [杉山代表]

□そのとおり なるべく優しく言うとよい 上から目線は よくありません

(櫻久からの付記) 今回取り上げたHさん(ご本人・アルツハイマー型認知症)及び
Yさん(ご本人・前頭側頭型認知症)につきましては、これからも、毎回ではありま
せんが、時折「家族懇談会」でのお話しについての短歌を載せていきたいと考えて
おります。

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2017/05/06

若年性認知症介護話短歌 (第一回)

     [櫻久 介護話短歌]~第一回

(コメント)①支部代表・副代表・若年認知症責任者及び当日の司会者はそれぞれ実名
(苗字のみ)を表記します。
②〔〕の中にA若しくはBとあるのは、病態の時期の表示とします。A=初期 
B=中期 C=後期。
③今回紹介する「介護話短歌」は、2013年5月開催の「若年性認知症家族
懇談会」からのものであります。

   〔A〕
〔Dさん(夫・61歳・アルツハイマー型認知症初期・去年退職)を自宅で
世話〕

◇職を持つ 夫(つま)の異変に気づきしは 「大震災」発生 まもなく

◇長年の 〈通勤ルート〉を我に問う かくなる度忘れ 夫(つま)に来るとは

◇走らない〈JR線〉では仕方なく 代わりに教える バスのルートを

◇真剣なルートの説明 納得の 普段の夫に我は安堵す

◇そのあとも 時々感ずる「物忘れ」 〝一度受診を〟 気がかりの我

◇勤務先 人事の人とも面談し 通告受けたり 夫(つま)の発病

◇自分でも 〝認知症かな〟 独言す 密かに悩むか 夫(つま)の日常

◇会社より 「定年退職」告げられる 〈継続勤務〉を望む夫に

◇かにかくに 去年(こぞ)の三月〈退職〉す その後の夫は〈自宅蟄居〉に

◇病名は 「アルツハイマー型認知症」 今の症状〈物忘れ〉だけ?

◇思い込み いささか私にあったらし 夫の症状 外にも幾つか

◇改めて 夫の日常観察す ギクシャク明らか 〈空間認識*〉
(*)空間認識=距離感が分からなくなるという認識障害の一種。日常的には
洗濯物がキチンと干せなくなるなど。

◇「距離感」を喪(うしな)いかけてる夫(つま)好む 「車の運転」 特に気がか


◇〈ドライブ〉の折には必ず助手席に 嘗ての楽しさ どこかに消え去る

◇現在は 特に「介護」の場面なく 「介護保険」も未申請なり

◇これからの〈家計経済〉考えて 私が「パート」で働き始める


[小林司会]

◆出来るだけ 早い機会に〈申請〉を することのよし 「介護保険」こそ

◆「運転」は 夫君は直ぐにも止めるべき 「距離感失認」 非常に危ない

◆「距離感」の喪失極めて危険なり 「対物・対人」 事故につながる


◇司会者の 今の助言を納得す 夫の〈運転〉 〝直ぐ止めさせます〟


◆おそらくは 貴方が止めても 簡単に夫君は〈運転〉 止めないでしょう

◆これまでの ドライブ体験・技術には プライド持ってる 貴方の夫君も

◆そうなると 家族の説得 簡単に うなづく訳にはいかない夫君は

◆手立てあり 主治医や畏敬の人頼み  「ドライブ禁止」を説得依頼す

◆〈距離感の誤り〉 突然起こりうる 瞬間判断 ほとんど不可能


◇〝働きたい〟 何とか何処かで職得たい 夫の 熱望今も変わらず

◇〝動けるし 意欲も持ってる私なら 「ハローワーク」も受けてくれるか〟と


◆やれること 必ず有る筈 夫君なら さがして求めて働くこと良き

◆「デイサービス」ボランティアなら夫君の場 見つける道をば模索すること


◇今の夫(つま) 「日常動作」は自立する 家事もこなせる 今までどおりに

◇このところ 写経に打ち込む夫なり 〝不思議と気持が落ち着くんだ〟と

◇〈散歩〉にも 単独歩行を黙々と 自己管理して 私は安心

(櫻久からの補足)
 Dさんが、「懇談会」で上のお話をなさったのは、平成25年5月です。
その後の夫君は、病態の進行が、割と緩やかで、地元で「ご本人中心の活動
サークル」の代表としての活躍を続けておられると伺っています。又、お話の最後の
処で、「車の運転停止」についてのやりとりがありましたが、その後の小林副代表(
当日の司会者)が確認した限りでは、夫君はDさんの願いを素直に受け入れて、「車
の運転」を止められたとのことです。



〔B〕
〔Gさん(夫・アルツハイマー型認知症)自宅で世話〕

◇「同窓会」 夫は都内に出かけいく 帰途で迷って〈銀座〉を歩く

◇なにゆえか 〈東横線〉にも乗車して 渋谷(*)と横浜 行き来した夫(つま)
(*)〔Gさん〕の夫君が、どうして「渋谷」まで行けたのか?=東京メトロ
銀座線の「銀座駅」から下り線に乗って、終点の渋谷駅」へ出たと推定される。以前
に利用していて、〈記憶〉が残っていたのではないでしょうか。

◇改札を何度か出入りの 挙句には 〈一万円札〉 小銭に化けたり

◇漸くに 〈相鉄線〉にたどり着き 無事に乗車し 帰宅を目指すか

◇しかれども 降りるべき駅 間違えて 一駅行き過ぎ 訴え電話が

◇心配の極点 味わう私だが 気を取り直して 夫を迎えに

◇昔日に 夫婦で出かけた〈銀座〉なり 記憶の残像 夫は記銘か

◇親しんだ 〈趣味の盆栽〉 突然に 振り返ることなく夫は端然

◇改めて 病気の症状 〈突然に〉 現れ出ること 知りえた〈出来事〉

◇徴候は 〈身だしなみ〉にも現れる 出かける際にも〈整髪〉 ウッカリ

◇片付けの キチンとしていた夫(つま)の筈 次第に私物を〈仕舞い込む〉だけ

◇既往症 くも膜下出血〉10年前 主治医の予告は 「脳機能障害」 

◇それ以来 定期に検査の〈脳機能〉 病気*診断 3年前なり
(*)病気=ここでは「アルツハイマー型認知症」を指す。

◇診断前 夫婦で旅行を楽しむも ホテルに迷惑 突如の〈不始末〉

◇自宅でも 時折〈不始末〉 驚愕し 脳外科受診し 漸く「診断」

◇戸惑いと困惑最中(さなか)に巡り会う 「若年期の会」 前が開(ひら)ける

◇年ごとに 病気の進行知らされる 〈歩行の速度〉も遅くなり来て

◇〈ヒゲソリ〉も〈好きなオフロ〉もむずかしく 私の「介助」が欠かせなくなる

◇哀しかり 「場所の認識」障(さわ)り出る 〈浴室〉 〈トイレ〉が逆になる夫(つま)

◇4年前 元気な私も最近は 〈入浴介助〉で 腰を痛める

◇一旦は 〈復職〉叶うも 仕事中 ミス頻発し やむなく〈退職〉

◇一時(いっとき)は 働く私も直ぐ免める 自宅で孤独の夫(つま)を見かねて

◇増えてくる〈日常動作〉の不具合が つまるところは〈要介護5〉の夫(つま)

(櫻久の付記)~Gさんは、残念ながら、一昨年2015年の秋に
お亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。